メルカリでの犯罪について研究していたら、副産物としてヤフオクだけに業者が生き残っている理由と、彼らの収益が意外によいことと、その状態がしばらく続くことがわかった。面白かったので紹介しよう。
まず簡単にメルカリ上の犯罪研究から。日本では犯罪者がメルカリを利用してマネーロンダリングする事例が多く、メルカリはあっち系の組織と裏でつながっているのではないかと疑いを抱く人もいる。ヤフオクは犯罪での利用が少ない。これがフリマ形式とオークション形式の違いから来るのではないかと疑問を持ったのが研究の発端だ。調べた結果、フリマ形式だから犯罪者が好むのではないことがわかった。米国ではオークション形式のeBayの犯罪利用が多く、フリマ形式の方が犯罪利用が少ない。犯罪者が利用するかどうかは、フリマかオークションかは関係なく、その会社のモラルに依存していた。つまりメルカリ社はモラルが低い。米国ではeBayがモラルが低い。どちらも今はかなり改善されているが、元々の体質なのであまり期待しない方がよい。
これで犯罪関連の研究は終わったのだが、研究途中でオークションとフリマでどのような住み分けになっているかがわかったのでそこを掘り下げた。 最近はフリマの方が優勢だ。日本も米国も同じ傾向でフリマの方が人気だ。フリマの特徴は一撃落札と送料無料だ(メルカリだけは送料別も選べる)。一撃落札はタイパを重視する現代人と相性がよい。送料無料は遠隔地でも送料の心配をする必要がないのが良い。このために取り引きはフリマへ流れる。オークションの方が向いているのは値付けに鑑定眼が必要とされる物品だ。しかし、美術品と中古車は別のオークションルートがあるので、それ以外のものがヤフーオークションやeBayに残ることになる。ここまでの調査結果でオークションとフリマの住み分けがわかった。
ところが、ヤフーオークションにはフリマの方が売れやすい雑貨や小型家電を売っている業者がたくさんいる。彼らはいったい何者なのかという疑問が湧いた。それについてさらに調べてみた。
同じ品物を同じお金を出して買う場合、個人出品者が売る品物の方がよい状態のものを買える。個人出品者にはヤフーが提供している送料割引システムがある。お手軽なんとか便という名前で、遠くに輸送する場合はクロネコやゆうパックの正規運賃よりかなり安い。送料が安いおかげで個人出品者は品物の方の値段を高く設定できる。そのため、送料も含めて同じ価格だったら個人出品者の方が業者より状態の良いものが手に入りやすい。
価格面で業者は不利に見えるのに、 彼らは廃業することなく元気にやっているのはなぜだ。結論から言うと、業者は時給3000円〜10000円の収入が得られてつぶれる心配はない。しかもAIで代替できないので今後も長く仕事を続けられるのだ。そのからくりを調べると面白かった。
からくりとは業者の仕入れ価格がマイナスであることだ。お金をもらって中古品を引き受けている。掃除業者や遺品整理業者から、ゴミ処理代をもらってゴミを引き受ける。ゴミの中の本当に価値があるものは、別ルートに流して高く売る。残った雑貨や小型家電をヤフオクに出品する。品物は安く値付けする。送料はクロネコや佐川やゆうパックの正規料金を指定する。あるいは正規料金の着払いである。正規料金を利用する理由は、業者はお得な輸送料金を使えないからもあるが、いちばんの理由は集荷してもらいたいからだ。お得な輸送料金はクロネコ営業所やコンビニに行ってQRコードを見せて発送する形式だ。たとえ業者にこれが使えても、1日に何十個も発送する業者はコンビニでひとつひとつQRコードを見せながら発送作業をする人の人件費を考えると割に合わない。だから、まとめて集荷してくれる運送業者に正規料金で頼む。 そしてノークレームノーリターンを指定する。業者のノークレームノーリターンは民法上は無効なのだが、数千円を取り戻すために裁判を起こす落札者はいないので、実質有効である。そして出品のルーティーンや発送のルーティーンを作ってアルバイトにやらせ、1日数十個をさばく。仕入れ価格がマイナスなので、2000円の品物ならアルバイト代やヤフオク手数料を払っても1000円以上の利益が出る。ノークレームノーリターンなので、品物が届いた後のアフターサービスの手間はかからない。これで時給を計算すると彼らの時給は3000円〜10000円となる。特殊な技術が不要なのにこの時給はかなり魅力的だ。中古品を仕入れて売り捌く古物商は届出さえすれば誰でもできる。ただし、時給が高いのは社長だけであり、出品用の写真を撮ったり、発送の梱包をしたりをアルバイトでやっている人は最低賃金クラスの給料しかもらえない。
こんなに美味しい商売なら、規模を膨らませて自動化したらもっと儲かると思える。そこで自動化のコストとそれがペイする規模を推定した。仕入れた中古品を置く倉庫、それをピックアップして識別するカメラ付きAIロボット。写真を撮ってヤフオクに出品手続きをするロボット、落札されたら品物を梱包して発送するロボットが必要だ。設備投資は10億円単位で必要だ。利益を出すためには毎日数万個の処理が必要になる。現実の業者は年間で1万個程度しか売っていない。その500倍から1000倍の規模でないとAIロボットはペイしない。世の中にそんなに中古品はないし、買う人もいない。つまり自動化はできない。これはずっと人間が行う仕事となる。そのため、零細業社が乱立してやっていけているのだ。
彼らが売る品物はノークレームノーリターンなので、壊れていたら困る小型家電やパソコン用品を彼らから買うのは賭けである。ハズレが届いたら泣き寝入りとなる。業者から買うのは出品の写真からまともかどうかが判断できる品物(ぬいぐるみ等)に限定した方がよい。