2026年7月4日土曜日

円安と株高が同時に起こる理由

円安は日本の国力低下が理由である。日本に限らず、どんな国も国力が低下するとその国の通貨は安くなる。当たり前のことだ。だから円安に疑問を持つ人は少ない。それに対して株高を不思議に思う人は多い。日本経済が冴えないのになぜ日本株は上がるのだろうか。

今の日経平均7万円はAI半導体銘柄が牽引していることが理由だ。これは日本経済の好調不調とは関係ない。ブームで上がっているだけだ。AIブームが訪れる前に日経平均は5万円を達成していた。この時は日本経済は冴えないのに株価が上がるという状況だった。これを不思議に思う人が多い。

答はシンプルで「通貨の価値が下がったから」だ。通貨の価値が下がったから食品の価格は上がった。日用品の価格も上がった。電気製品の価格も上がった。住宅の価格も上がった。ほぼ全ての商品の価格が上がった。株式も証券会社で売っている商品である。当然上がる。この現象は世界共通である。トルコは通貨下落が著しく、ここ10年で通貨の価値は1/8に下落した。つまり物価が8倍になった。同時にトルコの株価指数であるイスタンブール100種指数(日本の日経平均に相当)は8倍になった。物価が8倍になったら株価も8倍になった。とても整合している。この整合はとんでもない状況にも当てはまる。第一次大戦後のドイツは物価が1兆倍になるハイパーインフレにみまわれた。通貨の価値は1兆分の1に下がった。子供が札束をおもちゃにしている写真が有名だろう。そのとき、ドイツの株価は2兆倍になっていたのだ。パンの価格が上がれば株式の価格も上がるのは世界共通だ。

円の価値が下がった理由は、お金をたくさんばら撒こうと努力して実際にばら撒いたからだ。2010年に比べると社会に出回っているお金の量は1.5倍に増えている。社会で暮らす人の数は変わらないし、品物の数も変わっていない。お金の量だけが1.5倍に増えた。そうなればお金の価値が1.5分の1に減るのは当たり前だ。小学生でもわかる算数である。2010年に比べて今の物価は1.5倍になっているはずだ。それが1.3倍くらいで済んでいることの方が実は異常なことなのだ。

じゃあどうすればよかったのか。これは答が複数ある。どれがいちばんの正解と決めることはできない。これらの答を導き出すには小学生の算数では足りず、経済学の博士レベルでも足りない。異分野(社会学や文化心理学つまり人文学とか物理学や数学つまり理学)の博士号を経済学の博士号と同時に持っていないと解決できない問題である。チャレンジしがいのある難問と言える。

日本は複数あった答のどれにも辿り着けなかった。その理由を考えると面白いのでぜひやってほしい。短絡的な勘違いをしないようにヒントを述べておこう。アベノミクスが発端ではない。20世紀末に理由が生じていた。突き詰めて理由を遡ると江戸時代まで遡れる。そこから少しずつ間違いの種子がばらまかれていた。間違いの種子は発芽した直後は大して悪さはしない。大きく育つにつれて悪影響が社会全体を蝕んでゆく。大きく育ったとしても直す機会はあった。でも「間違いを直さない」のがほとんどの日本人が持つ性質なので直さなかった。最初に直すべきは「間違いを直さない」性質だった。しかし決して自分からは直さないのが性質なのだから、日本人のこの性質は永遠に直ることはない。政治家も官僚も国民もみんな間違いを認めず直さないのだから仲良く没落するのは仕方のないことだ。仲間同志でケンカしない方がいい。

2026年7月2日木曜日

介入狙いのドル売り

ニュースによると、日本政府の円買い介入をあてにしたドル売りポジションを持っている日本人投資家がそこそこいるそうだ。真っ当な作戦だと思う。私は今回はドル売りはしないが、彼らの作戦は合理的だと認める。彼らは介入が実施されればドルを買い戻して利食いする。日本政府としてはこれらの投機筋に儲けさせる介入はしたくないと思うだろうし、そもそも現在のファンダメンタルで介入しても無駄だと分かっているだろうし、本当は介入したくないのだが、介入せざるを得ないだろう。気の毒な立場だと思う。

介入なしに円高になるには、日本経済の復活が条件だがそれを確認するためには5年10年の長期間が必要だ。それだけの長期間を介入だけで円を支えることはできない。とはいえ、「負けました」と言って投げ出すこともできない。戦争なら降伏ができるが、経済の没落は投げ出すことさえできない。日本経済のことを真面目に考えている国会議員など700人の中の数人しかいないが、その考えている数人はたいへんだと思うよ。

2026年6月28日日曜日

小幡さんの投資は死んだ論

昨日に続いて小幡さんの記事についてだ。小幡さんは投資は死んだと今年になってから言うようになった。今回の記事を読むまでピンとこなかったが、今回の記事で納得がいった。経済活動は複雑系なので予測できないことは私も以前から気づいていた。小幡さんや私に限らず、このことに気づいている研究者は少なからずいる。経済活動には人間の心理が加わるので複雑系になってしまう。

この観点からさらに進めて、人間が何を求めるかが時代と共に変わることから投資が無意味になると論じたのは小幡さんが最初だろう。小幡さんの予想は的中すると思う。すぐにではないが、徐々に投資全体のリターンは薄まっていくだろう。

2026年6月27日土曜日

小幡さんのAIバブル崩壊論に納得

極端な意見を述べることが多い小幡績さんを私は好きである。私が同意できない意見を言うこともあるが、それでも好きである。はっきり物を言うひとは正直で潔い。

小幡氏はこれまでさんざん株式市場のバブルは崩壊すると言い続けてきた。本人も「予想を外し続けている自分」「私は逆神と思われている」と自覚しているが、バブルはいつ崩壊するかわからないのが普通なので時期は当たらなくてよい。今回のAI・半導体バブル崩壊の記事は、特に説得力のある記事だった。「AIの中核企業であるアンソロピックとオープンAIのどちらかは確実に消え」の記述を読んで、おぼろげに感じていたことを言葉にしてくれたと思った。高い確率で今回の小幡氏の予想は当たる。いや当たらなくてはならない。理由を以下に述べる。

私はアンソロピックのclaudeなしではもはや仕事はできない。それとアンソロピックが企業として持続性があるかは別の話だ。毎月100ドル払ってくれるユーザーが1億人いればアンソロピックは継続的に事業をやっていけるが、そこまで課金ユーザーは増えない。claudeに毎月100ドル以上課金して元が取れる人間は1億人もいない。今後増えたとしても1億人には届かない。もし1億人に届いたとしたら、それは社会が大幅に変わることを意味する。それもかなり悪い方向にだ。claudeを使いこなす1億人でホワイトカラーの仕事は全てこなしてしまうからだ。

世界の人口は80億人いて、そのうち働いている人は35億人だ。働き口は第一次産業が9億人、第二次産業が8.5億人、第三次産業が17.5億人だ。第一次産業と第二次産業は人間の身体が必要な仕事がほとんどなのでAIの影響を受けにくい。第三次産業の中でも介護や接客サービスは人間が必要なのでAIの影響を受けにくい。人間が必要な仕事についている人の数は第三次産業17.5億人の中の10億人だ。のこりの7.5億人がいわゆるホワイトカラーだ。1億人のAIを使いこなす人でホワイトカラーの仕事が片付いてしまったら6.5億人が失業する。35億人のうちの6.5億人は多い。しかもホワイトカラーはそれ以外の人より給与が高めだ。彼らへ支払う給与が消える(=その分の消費が消える)影響は大きい。消費が減少する影響は社会の全てに及ぶ。6.5億人が失業すると社会は大混乱に陥るだろう。これまで大した仕事もしていなかったのにでかい顔をしていたホワイトカラーが自滅しても、そんなのは知ったことかと思う人は多いだろうし、私もざまあみやがれと思う。しかし溜飲がさがるのと社会が大混乱に陥るのを防ぐのとでは後者を重視せざるを得ない。

今のレベルのAIでもその力を十全に発揮してしまうと、社会はディストピアと化するということだ。以前はAIが人間を超えるシンギュラリティに達すると社会がディストピア化すると警鐘が鳴らされていた。シンギュラリティに達するまでもなく、AIがそこそこ働けるようになるだけで社会はディストピア化するのだ。

だからAIバブルが弾けるのはディストピアを防ぐためにも必然だ。AIバブル崩壊へ自然に落ち込むのなら、社会は意外にうまく動いていると感心せざるを得ない。

2026年6月26日金曜日

Opus4.8がagentsを動かすと5時間枠を30分で消費し尽くす

Opus4.7ではこんなことはなかったが、Opus4.8では複数エージェントを使用すると30分で5時間枠を使い切る。Claude MAX(x5)の場合だ。Claude MAX(x20)なら、2時間は持つことになる。さらに100ドル払うことになるが、Claude MAX(x20)にアップグレードすることになるかもしれない。エージェント機能にはたいへん助かっており、文句を言うつもりはない。

2026年6月24日水曜日

それでも米国はNo.1であり続ける

米国の生活コストが高騰していて若年層と女性の国外移住希望者の割合が増えている。米国は住みにくい国になった。しかし研究開発をしたい人、ビジネスをしたい人にとって、米国より魅力的な国はない。他の国では自分の希望は叶わないという理由で、彼らは米国に引き寄せられる。米国の繁栄を牽引しているのは彼らのような優秀な人間であり、政治や暮らしに文句を言っている大衆ではない。そのため、どんなに米国が住みにくくなっても米国は技術でも経済でも世界のNo.1であり続ける。

優秀な人を集めたければ米国の真似をすればよい。研究者はコストをかければ集めることはできる。しかしビジネスをしたい人を集めることはどんなにコストをかけても中国や日本はできない。規制が厳しい国ではビジネスは始められないからだ。世界でいちばん規制が少なくて自由な国は米国である。米国に起業家が多いのは当たり前だ。

外貨のポートフォリオから米ドルを外すことは当面できそうもない。

2026年6月23日火曜日

知性は正のフィードバックがかかる

オルテガは「大衆の反逆」の中で "Noble es el que se exige mucho"——自らに多くを課す者が貴族である(何も課さない者が大衆)——と述べている。選良(貴族)はさらに学び、大衆は自分に満足していて傲慢なので学ばない。その結果、賢い人はさらに賢くなり、愚かな人は愚かなままとなる正のフィードバックが生じる。これを傲慢仮説と呼ぼう。

Heckmanの言う"skill begets skill"では、知れば知るほど次の一個を学ぶコストは下がり、学んだ結果の価値は上がると主張する。これを補完性仮説と呼ぼう。

「賢い人がさらに賢くなる」現象は傲慢仮説でも補完性仮説でも説明できる。そして我々の普段の暮らしからもそれは観測されている。知性に正のフィードバックがかかるのは自然なことらしい。

生物は魚くらいのレベルまでは強靭な身体を持つ個体が有利だった。しかし、恐竜、鳥、哺乳類レベルになると知性を持つ個体が有利になった。ライオンや狼は賢いものがリーダーになり、賢いリーダーに率いられた群れは上手に餌を取れるので生存の確率が上がる。魚レベルでも賢い個体の方が有利に見える事例もある。

生物は身体より知を重視した方が生き延びられそうだ。身体の強靭性より知性に優れる方が生存に有利なことは宇宙全体で通用する一般的な法則なのだろうか。将来、他の星系の生物のことを知ることができるようになると、それがわかるだろう。