2025年2月3日月曜日

政治も商売も多数派のコントロールが肝と知る

ドイツのワイマール共和制からナチス党隆興の歴史について眺めた。イギリスやフランスなどの西ヨーロッパがユダヤ人を迫害している中、ドイツは唯一ユダヤ人の人権を認めた立派な国家だったのだが、米国の大恐慌をきっかけに経済危機に陥って国が荒れた。そこで金持ちのユダヤ人を敵とする思想のナチス党が大衆の賛同を得て政権をとった。

中国共産党の発足から国共内戦を経て共産党政権の誕生の歴史を眺めた。中国共産党は貧しい農民を仲間に引き入れて数の力で国民党との戦いに勝った。構築された政治体制はそれなりにまともな議会制だったのだが、やがて共産党独裁になり大躍進政策に失敗して農民に4500万人もの餓死者を出した。そのため独裁は一時的に弱まったが、共産党は社会をよく知らない若者を大量に味方につけて文化大革命を画策して、再び人権無視の国家を作り上げた。

米国でトランプ政権が発足した理由は貧しくなった低学歴白人や一部のヒスパニックの票を得たからだというのはよく知られている。

これ以外もほぼあらゆる歴史において、権力を勝ち取った者は独裁者であっても多数派を味方につけた者ばかりだ。ビジネスにおいても多数派に物を売りつけることに成功した者が勝者になることが多い。

では多数派とは何か。4000年前の文明勃興期でもギリシャ時代でもローマ時代でも中世でもそして現代でも多数派とは大衆のことだ。オルテガの「大衆の反逆」で指摘されているように、大衆の特徴は物事を真剣に考えない(=自分が賢いと思い込んでいる)ということだ。物事を考えない連中には、幼稚園児でも理解できる共産主義のようなイデオロギーが浸透しやすいことは、ロシア革命をみても中国共産党をみてもよくわかる。金持ちは悪党だというイデオロギーも大衆には受ける。それをナチス党やトランプは利用した。日本の政党も大衆が物事を考えない性質を利用して票を得ている。政治家だけでなく世界中の企業は物事を考えない大衆が買いたがる品物やサービスを作り出すことに知恵をしぼっている。

大衆主導で社会が進むこの構図は簡単には変えられそうもない。問題は大衆は物事を考えないために大衆主導で物事を進めると非常に高い確率でそれは失敗することだ。賢い選良だけで人類が構成されていれば地球温暖化は起きなかった。戦争も起きないし、人種差別も起きない。じゃあ、地球から大衆を追い出せば良いかと言うと、まさにそうなんだがそれは難しい。そこで選良は大衆を追い出すのではなくて、自分がどこかへ行こうとしてしまう。仏教で悟った人が涅槃へ行くということもそのどこかへ行くことの一形態だ。

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