2024年12月1日日曜日

縦に長いネットショッピング画面が定着した歴史

楽天市場やyahooショッピングで買い物をすると、やたら縦に長い画面が現れる。10ページ以上スクロールしないと目的の品物に辿り着けずに不便だ。この表示はほとんどの人に嫌われているのに、ショップがこの表示を止める気配はない。これはネットショッピングの初期に「画面が縦に長い方が売上が増える」という都市伝説的な誤った噂が流れてそれが定着したからだ。

ネットショッピングが始まったころはまだスマホは存在しておらず、PCで買い物をしていた。だからスマホのGUIに合わせるために縦長画面にしたのではない。PCの横長ディスプレイでも縦に長い画面だったのだ。

「画面が縦に長い方が売上が増える」という都市伝説は各ショップが思いついたものではなく、各ショップからwebデザインを請け負うソフトハウスが言い出した。縦に長いと目的の商品に辿りつくまで延々とスクロールしないといけない。途中に広告を入れておけば、ユーザーに無理やり広告を見せることができるというのが彼らの理屈だ。

これが愚かにも定着してしまったのは、科学的な思考ができない中世のキリスト教教会のような(最近アニメ化されたチに詳しい)論理のためだ。画面が縦に長い方が売上が増えることを確かめるためには、縦に長い画面とそうではない画面とのふたつのデザインの商品画面を作成し、どちらの方が売上が上がるか比べないといけない。実験では1/2の確率で縦長の画面を表示するショップのwebページを制作する。ショップを訪れたユーザーが100人の場合は50人には縦長の画面を表示し、別の50人にはそうでない画面を表示する。これでどちらの画面を見せられたユーザーがたくさん物を買うかを比べると正しい判断ができる。

ところがそんな実験は行われなかった。単にこれまでの商品画面を縦長の商品画面に変えた実験をしただけだ。そしたら売上が増えたので縦長が良いということになった。売上が増えたのは縦長画面にしたおかげではないかもしれないのにだ。ネットショッピング初期ではネットショッピングを知らない人が多かった。そのような人が時間が経つにつれ口コミでネットショッピングを知り、これは便利だと買い物をしたかもしれない。つまり縦長画面にしようがすまいが、時間が経つと売上が増えた可能性がある。そしておそらくそれが真実だ。

ネットショッピングの各ショップで買い物をするかどうかは価格がいちばんの理由となるが、買い物しやすいかどうかも理由になる。同じ品物が同じ価格で売られているなら買い物しやすいショップで買うのが当然だ。買い物しにくい縦長画面は不利になるはずだ。

私は今日、コーヒー豆を買った。日本でコーヒー豆を安く売っているネットショップは名古屋の加藤珈琲と鳥取の澤井珈琲が2大巨頭だ。私はそのどちらかのショップで買う。今日は澤井珈琲の冬の限定ブレンドを求めるつもりで澤井珈琲のページを訪れた。しかし、品物を検索してから商品ページに訪れたのに実際の商品の表示の場所は縦長ページの最下部であり、延々スクロールしても辿り着けない。嫌になった私は、加藤珈琲のトップページに切り替えてそこで別の豆を買った。縦長画面だから売れないこともあるのだ。(ちなみに加藤珈琲のページも十分縦に長い。澤井珈琲よりはマシというだけだ)

そろそろ科学的な思考をして縦長画面を止めようと思わないといけない。

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