2023年9月21日木曜日

スウェーデンのグリペン戦闘機供与をゼレンスキー大統領が希望(エリア88の影響?)

8月19日にスウェーデンを訪問したウクライナのゼレンスキー大統領がサーブ社のグリペン戦闘機の供与をクリステション首相に願った。しかし、クリステション首相は断ったそうだ。

なぜグリペン?かを理解できる人間は世界では日本がいちばん多いだろう。日本の漫画である新谷かおるのエリア88で主人公風間真がサーブ社のドラケンを駆っていたことは日本人ならかなり多くの人が覚えている。エリア88連載当時の1980年代でも既に旧式化していたドラケンを風間が選んだ理由が燃料・弾薬補給の地上時間が短いこと、高速道路からも離着陸できるSTOL性能、メンテナンスフリーの部品が多く前線でのメンテナンスが楽なことだった。その特徴はサーブ社の後継機であるビゲンとグリペンに引き継がれた。ドラケンとビゲンは退役したので、今はグリペンだけが現役だ。ゼレンスキー大統領がグリペンを欲しがった理由は、風間がドラケンを選んだ理由と同じだという。ゼレンスキー大統領はどこでグリペンの特徴を知ったのだろうか。軍事専門家がアドバイスしたのだろうか。まさかエリア88を読んだわけではあるまい。

エリア88の中ではドラケンが当時最新鋭だったF-14トムキャットと互角に空戦していた。私はフライトシミュレーターで互角であることを確かめることができた。ドラケンの空戦性能は低空ではF-14と互角で、高空ではF-14より優れていた。驚きの結果だ。これはドラケンだけが突出して優秀という訳ではなく、1950年代に設計された第二世代のジェット戦闘機はどの国の機体もドラケン並の飛行性能を持っていた。戦闘機は空を飛ぶ機械としては60年前に完成の域に達していたのだ。

キャノンコンバットの格闘戦で21世紀の戦闘機と互角に戦える第二世代戦闘機を挙げると、ソ連のMIG-21、フランスのミラージュIII、イギリスのライトニング、スウェーデンのドラケン、米国のF-106デルタダートがある。いずれもマッハ2級で、旋回性能がとても良い。これはデルタ翼なのが理由だ。MIG-21とライトニングには尾翼があるが、主翼の翼形からすると実質的にはデルタ翼機である。

第二世代戦闘機は水平面の旋回は今の戦闘機と互角だ。降下機動も今の戦闘機と互角だ。当時は高出力エンジンがなかったため、上昇機動は今の戦闘機に劣る。第二世代の中でもライトニングだけはエンジンを無理やり2機積んだので、上昇力でも今の戦闘機に負けない。こんなことは誰もしないが、機体が軽い状態(燃料タンクがほぼ空)でアフターバーナーを使えば、ライトニングはF-15と同様に垂直加速上昇ができる。ライトニングとんでもねーと思うが、狭い機体に無理な形でエンジンを2機詰め込んだのでエンジン過熱火災の事故が多発したというオチがつく。

第二世代戦闘機はステルス性がなく電子装備が劣るので、今の戦闘機に遠くからミサイルを撃たれたら手も足も出ない。ミサイルなしのキャノンコンバットなら今の戦闘機と互角に戦えるが、ミサイルを積まないで出撃することは現在ではあり得ないので、そのような状況はなかなか起こらないだろう。

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