2023年9月20日水曜日

仮想戦記の欠点は日本の軍人の頭が良いと描かれていること

ここ10年で異世界モノのライトノベルが量産されたように、1980年代から仮想戦記が量産された。どちらのジャンルも現実世界で思うように生きられない読者のストレスを発散させることで人気を得た。ただし、どちらのジャンルの本も10冊も読むとどれもストーリーが同じことに気付かれて飽きられる。異世界モノと仮想戦記は生成AIでも書けそうなくらいオリジナリティに欠けたものが多い。

仮想戦記は読むに耐える作品は千に一つしかない。読むに耐える作品の中では私は佐藤大輔の征途(1993-1994)を推す。その理由は最後に述べる。

仮想戦記でいちばんリアリティを損なうのは、日本の軍人がまともな考え方ができる人間として描かれていることだ。それではウソっぽい。彼らがまともだったら史実であんなボロ負けはしなかった。日本が負けたのは兵士特に司令官の頭が悪かったからで物量のせいではない。私が米軍の司令官なら日米の物量が逆でも米軍が勝てた可能性が高いと考えただろう。

かわぐちかいじの漫画ではイージス艦が帝国海軍のために十分に活躍できない点がはがゆいが、あれでも活躍しすぎなくらいだ。イージス艦が当時の帝国海軍の手に渡ったとしても、当時の日本軍では芦ノ湖の足こぎスワンボートくらいにしか使えなかっただろう。逆に米軍の手に渡ったなら、空母何隻分もの活躍をしただろう。要するにバカは良い兵器や人材を持っていても活かせないということだ。日本は頭が悪いから負けたのであって、兵力差や物量で負けたのではない。そのあたりを正確に描かないと仮想戦記のリアリティは大きく損なわれる。リアリティを高めると読者のストレス発散にはならないから、本が売れないとは思うが。

佐藤大輔の征途が秀逸な点のひとつに、自軍の流れ弾で無能指揮官である栗田健男中将が偶然戦死し、そのおかげでレイテ湾海戦に日本軍が勝利するという導入部がある。未来兵器で米軍を打ち負かす必要はないのだ。自軍のバカが減れば善戦できるのだ。日本軍でストレスを発散させたいなら、あの無能指揮官がいなければよかったのにという願望を叶えてくれるのが一番だ。いなければよかったバカは何十人と挙げられる。戦争に負けるはずだ。

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