2023年9月19日火曜日

修繕積立金が安すぎて安易にマンションを買えない

マンションのパンフレットを見ると毎月支払う管理費と修繕積立金が書いてある。この修繕積立金が安すぎる。これでは足りないのは小学校低学年の算数ができれば分かる。魅力的なマンションがいくつもあるが、修繕積立金が安すぎて将来破綻するのが分かって残念な気持ちになる。

毎月どれくらいの修繕積立金があれば足りるかを小学3年生でもわかるように説明しよう。

2022年に20年目の大規模修繕を行なったマンションの実例だ。特に大きな修繕箇所はなかったが修繕に2.5億円かかった。マンションが建った20年前に立てた計画では2億円で済むはずだったが、昨今の原材料費と人件費の高騰で2.5億円になった。この金額は建物の大きさに対しては極めて平均的なもので、相場に比べて高すぎも安すぎもしない。

このマンションは9階建、全72戸、平均床面積70平米で、新築のときの価格は平均6500万円だった。新築販売のときに1戸あたり平均50万円の修繕一時金を徴収している。

20年間で2.5億円の修繕費を積み立てるために、毎月の修繕積立金がいくら必要かは以下の割り算でわかる。小学3年生でも理解できるだろう。

(2.5億円-50万円×72(戸))÷20(年)÷12(月)÷72(戸)=12384円

各戸が平均して毎月12384円を積み立てないと大規模修繕のときにお金が足りなくなる。実際は大規模修繕のときだけでなく、毎年細々した不具合が発生して、その修繕のためにもお金を使うので、もっとお金が必要なのだがここではそれはおいておく。ざっくりした金額を知ることが目的だからだ。

これがタワマンだと足場代に相当するゴンドラ代諸々が高くなるのでこの2倍から3倍が必要だ。全戸数が少ないマンションだと1戸当たりは割高になってこれよりたくさん必要になる。材料費は地方でも同じなので、地方だからといって修繕費がひどく安くなることはない。地方で安くなるのは人件費だが、人件費が安くても2.5億円が半額になったりはしない。せいぜい2.5億円が1割引きになるくらいだ。

今売られているマンションのパンフレットに目を通してみよう。十分な修繕積立金を設定している物件があるだろうか。残念ながら私は見たことがない。今から20年後にはおそらく今より修繕費は値上がりするだろう。その分も考慮すると圧倒的に足りない。

いざ大規模修繕をするときにお金が足りないとわかったら、追加で1戸当たり何十〜何百万円もの修繕一時金を徴収する必要がでてくる。1戸でもその一時金支払いを拒んだら大規模修繕計画は頓挫する。修繕ができないでもめている内に壁と屋上から雨が染み込んで鉄筋が錆びてマンション建物が劣化する。劣化した建物からは住人が逃げ出してマンションはスラム化する。

マンションがこの有様だと自分で修繕計画が制御できる一戸建ての方が長く住むには安心かもしれない。別の安全策としては新築マンションを買って大規模修繕を待たずに20年おきに次の新築マンションに住み替えるかだ。ただし、新しいマンションほど立地は悪くなりがちなのが厄介なところだ。

そういう意味では半分以上のフロアがオフィスとお店である麻布台ヒルズは、修繕費を住人だけで賄う必要がないから安心かもしれない。そもそも200億円の部屋を買える人なら、修繕一時金を1億円徴収しますというお知らせが届いても慌てないだろう。

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