現物株を買って塩漬けにすることが多い投資家だったら、これはいいと思うだろう。どうせ塩漬けにするくらいならプレミアムをもらって待った方がいいと。プレミアムだけで年利1%~5%を受け取れるし、配当も入れると年利10%で運用することも可能な銘柄もある。ところが、周りを見渡してみると、カバードコール戦略でばんばん儲かってますよーという話をあまり聞かない。本当に儲かっている人は黙って儲けるので、他人に吹聴しないせいかもしれないが、それでも本当に儲かるのならこれをやっている人がもう少し目立ってもよいはずだ。何か落とし穴があるのではないかと疑うのが自然だろう。そもそも投資の世界にフリーランチはめったにない。
なぜカバードコール戦略は流行らないのか。実はそれはオプションの売りと同じ欠点があるからだ。カバードコール戦略は現物買いとオプション売りの組み合わせだから、オプション売りの欠点を持つのは当然とも言える。オプションの売りの欠点は原資産が大きく値動きすると危ないことだ。でもカバードコール戦略では売ったオプションがインザマネーになっても現物株を渡せばよいからリスクはないでしょと思うかもしれない。しかし一部の投資家はそこを嫌う。せっかく株が値上がりしたのに、その値上がり益を十分に受け取れないことになるからだ。先ほどの例ではグーグル株が120ドルに値上がりしても、100ドルで売らないといけないから20ドルしか儲けられない。それに数ドルのプレミアムが加わるだけだ。普通に持っていれば40ドル儲かったのに、その権利を放棄しなければならない。
逆に原資産が大きく下がったときを考えよう。このときはプレミアムの数ドルを受け取るだけなので、何の問題もないように思うかもしれない。塩漬けが平気な人はそうだろうが、一部の投資家はこれも嫌う。損切りできないからだ。損切りできないと投資資金を回転させることができない。いや、コールオプションは遠く離れたのだから、損切りしても平気だろうと思うかもしれない。しかし、損切りした後に株価が反転して万が一コールオプションがインザマネーになったりしたら大損害だ。現物株を損切りした後は、オプションの裸売りになってしまうのだ。オプションのプロなら現物株を損切りすると同時にこのオプションを買い戻すだろうが、損に損を重ねるこの決断は素人投資家にはなかなかできない。
前者の値上がり益を十分に受け取れない欠点の方が、後者の損切りしにくい欠点よりずっと大きい。後者の損切りはできる人はあっさりできるからそれほどの欠点ではない。そうだとしても株式投資の醍醐味は株価が大きく上がったときの値上がり益だ。これを限定してしまうカバードコール戦略が流行らないのは仕方がないと言える。
とは言え、株価の値上がりがほとんど期待できない銘柄で、しかも手放す気はないというならコールオプションを売ってもいい。ただし、そのような銘柄のプレミアムはそんなに高くはない。流動性が十分ある市場ではリスクとリターンが釣り合うのは当然のことだ。これはブラックショールズ方程式の導出を理解できなくても分かるだろう。
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