このまま進むと、年金の破綻とか社会保障費の破綻は確実だが、破綻したからって北斗の拳みたいな世界になる訳ではない。よくよく考えるとインフレになるだけだ。ならばインフレの程度さえ分かっていれば対応もできるだろう。暗算だがやってみよう。
破綻してもインフレで済む理由を最初に解説しよう。小学生程度の算数で年金は破綻するのは確実と分かる。しかし、破綻というのは日本年金機構のお金が尽きて年金を払えなくなる状態のことだ。そうなったらどうなるか。シルバー民主主義なのだから赤字国債を発行して、国が年金を払ってくれるようになる。十分な額ではないだろうが、何ももらえないということはない。同じ理屈で、社会保障費の赤字も国債でまかなうので、病院へ行けないとか、病院がつぶれるなんてことにはならない。赤字国債の乱発でインフレになるだけだ。
じゃあ、インフレはどのくらいか。第一次大戦後のドイツやジンバブエのようなハイパーインフレになったら困る。それも心配ない。以下に計算した。
今の日本年金機構の赤字は700兆円だ。年20兆円ペースで増えている。この赤字は増え続けるが、やがて増加は頭打ちになる。日本の人口が1億3000万人で頭打ちになったのだから、高齢者もやがては減るからだ。50年後に最大赤字になるとして、そのときの赤字が1700兆円だ。
社会保障費は年間120兆円使っている、そのうち85兆円は国民の保険料や年金として徴収している。赤字は年間35兆円だ。そのうち20兆円は年金の赤字なので医療費や生活保護の赤字は15兆円だ。これも増えるだろうが、多めにみつもって4倍になっても60兆円だ。それが50年続いても3000兆円の赤字にしかならない。
1700兆円+3000兆円=4700兆円を赤字国債でまかなうから、それだけ広義のマネーストック(流通しているお金の量)が増える。今の広義のマネーストックが2000兆円だから、それが6700兆円に増える。約3倍だ。モノは増えずに、お金の量が3倍に増える。となると、50年後には物価が3倍のインフレになっていそうだ。50年後に物価が3倍になるインフレでは毎年のインフレ率は2.2%となる(ここは暗算ではなく関数電卓使用)。
このまま完全無策であっても、インフレ率は毎年2.2%程度で、年金がなくなるわけでもないし、病院へいけなくなるわけでもない。ならば政府の無策をそれほどストレスに感じる必要がないことが分かるだろう。ただし、50年後には日本は世界の貧しい国ワースト10には入っているだろう。たとえ日本はそうだとしても、ちょっと考えのある人は国外へ出ればよいだけなので、さほど問題でもない。
この計算には為替や外国からの輸入は計算に入れていない。輸入品は高くなるが、国が貧しくなるとぜいたく品を買う人は減って、必需品である食料や日用品を買うだけになる。食料もわざわざ高い輸入品を頻繁に買う人は減るだろう。日本の食料自給率は金額ベースで60%だが、国が貧しくなると90%くらいに上がるはずだ。だから、輸入を計算に入れていなくてもそれほど結果には影響しないとした。
MMT支持者であっても「国家予算の50倍もの通貨を発行するとかインフレになるに決まっているだろう。バカじゃないの?」と言うだろう。しかし、そのバカなことを日本は今後やって行こうとしているのである。誰かが止めようとしても「高齢者の命をどうするのか」と言われて阻まれてしまう。MMTよりシルバー民主主義の方が経済理論としてははるかに強力なのだ。
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