2022年10月9日日曜日

自宅に大量の現金を保管している人はバカなのではなく、単に脱税をしていただけ

私は自宅に数千万円の現金を置いている人のことが本当に不思議だった。そんな人の存在はオレオレ詐欺のニュースで知るのだが、日本にはそんな人がたくさんいることを知った。「なぜ?」「なんのために?」と思った。銀行に入れておくのと自宅保管とを比べたら、自宅保管の方がはるかにデメリットが多い。それなのになぜわざわざ自宅に置くのか。彼らはバカなのか。疑問に思いつつ、明確な答が見つからないまま10年以上が過ぎた。

最近大村大次郎さんの「お金でわかる世界の歴史」という本を読んだ。革命や戦争に至る理由が経済でシンプルに説明できることが興味深かった。著者の大村氏はもと国税局調査官で、税金関係の本を30冊くらい出している。それらも読んだ。「脱税のすすめ」「税務署の正体」「億万長者は税金を払わない」などなど。脱税をしている人は多く、摘発されていないものを含めると数十万件以上の脱税が普通に行われていることが理解できた。これまで億単位の所得税を払ってきた私はたいそう世間知らずであることを自覚した。

大村氏の著書には自宅に大量の現金を置いている人の理由は直接書いてはいなかった。しかし、私はすぐに分かった。これまで不思議に思っていた大量の現金は脱税により作った資産であることが。税務調査では帳簿や領収書や銀行口座を調べる。しかし現金は調べようがない。ガサ入れで現金が見つかって脱税が発覚するなんてことは極めて稀だ。帳簿に載せないカネを現金で保管することは最強の脱税手段なのだ。脱税以外の理由で自宅に何千万円もの現金を置いておく意味はない。火事で焼けるかもしれない、泥棒に盗まれるかもしれない、利息もつかない、良いことなど何もない。脱税のためだからこその現金保管なのだ。

オレオレ詐欺で被害にあった高齢者本人が脱税したとは限らない。家族や先祖が脱税してつくったカネを引き継いだだけかもしれない。そうだとしても、裏金であることには違いないのだから、それが盗まれたとしても同情する必要はない。悪党が悪党からカネを盗んでも「まあ好きにやってくれ」としか言いようがない。オレオレ詐欺事件は「悪銭身に付かず」という言葉で説明するのが適切だと思う(本来の意味は不正に得たカネは無駄づかいをしてすぐなくなってしまうことなので厳密には違うが)。

だから自宅に大量の現金を置いている人はバカなのではない。それを銀行へ預けると脱税が発覚するから、仕方なく自宅に置いているのだ。彼らには彼らなりの理由があるのだ。私はそういう高齢者をバカと思っていたが、そうではなかった。彼らは悪党ではあってもバカではない。銀行に預けると悪事が発覚するということは理解できているからだ。文脈から分かると思うが、脱税で作ったカネを自宅に置いている連中を悪党と言っているのであって、まっとうな手段で作ったカネを自宅で置いている人は悪党ではない。しかし、まっとうな手段であれば、申告時の金額証明のために銀行なり証券会社なりのしかるべきところに預けて計算してもらうはずだから、異常なくらいの大量の現金を持っていたら悪党と言い切っても間違いではないだろう。税務署員の前でお札の枚数を数えてみせて税額を申告するなんてあり得ないからだ。つまり彼らは脱税をしたのだ。

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