しかし、よくよく調べてみるとターボチャージャー(排気タービン過給機)付きエンジンを製造できたのはアメリカだけで、イギリスもドイツも日本もスーパーチャージャー(機械式過給機)付きエンジンで戦っていた。イギリスやドイツが高高度性能の低い戦闘機しか作れなかったかというとそんなことはなく、スピットファイアやTa-152Hは高高度性能の高い戦闘機として良く知られている。スピットファイヤと同じロールスロイスマーリンエンジンを搭載したアメリカのP-51も高高度性能は良く、B-29を護衛して高空を飛来している。
ちなみに高高度性能が全然ダメと思われている零戦だってスーパーチャージャーを搭載している。同じスーパーチャージャー付きエンジンなのに、P-51やスピットファイヤのマーリンエンジンと日本の栄エンジンは何が違うのか。それは単純に馬力の差だ。マーリンエンジンは1500~2000馬力で栄エンジンは900~1100馬力だ。どちらもスーパーチャージャーで高高度でのパワーダウンをなるべく抑えるようにしているものの、元の馬力が500馬力以上違うとそれが高高度での差になる。もちろんスーパーチャージャーの設計も影響する。どの高度域に最適化したスーパーチャージャーかで、性能は異なってくる。さらに日本のエンジンが不利なのはオクタン価の低いガソリンしか使えなかったことだ。過給機で過給すると実質的に圧縮比が上昇する。圧縮比が上昇するとノッキングが起きやすくなる。ノッキングを起きにくくするのにオクタン価の高いガソリンが役立つ。つまり、日本のオクタン価の低いガソリンではあまり過給できない。
結論としては、日本機が高空のB-29を墜とせなかった理由は排気タービン過給機のあるなしではなく、単に元のエンジンパワーが絶対的に足りなかったからが正確だろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿