2022年9月10日土曜日

日銀黒田さんの金融緩和作戦がうまくいかない理由

日銀がゼロ金利政策を続ける中、諸外国が金利引き上げを次々に決めるので、円安になっている。金利平価説の立場では円安は当たり前だ。購買力平価説の立場では円安にはならない。このあたりの議論をしていたら日が暮れるので省略。理論はどうあれ事実は円安なので、投機家は儲かる方に賭ける。彼らは素直に円売りドル資産買いのキャリートレードを淡々と続けている。このままではドル円は160円になり、輸入品の価格が上がって困ったことになる。
円安で困っている人は日銀がいつまでも金利を引き上げないことに文句を言っている。しかし、日銀は「景気が悪化するから金利引き上げはできない」と金利を上げない。日銀の主張は本質的には正しい。しかし実際はうまく行っていない。なぜ日銀の作戦はうまくいかないのか疑問がわいてくる。具体的な疑問点は以下の2点だ。
  1. 2012年からゼロ金利政策を続けているがなぜ景気はよくならないのか。
  2. 今金利を引き上げたら本当に景気はさらに悪化するのか。
これらを検討しよう。
まず1.の景気がよくならない理由。景気が良いとは企業が儲かって、労働者の給与が増えることだ。要するに国民の暮らし向きが良くなることを景気が良いと言う。ゼロ金利政策をすると、企業は借入をしやすくなるから業績を上げやすくなる。実際ゼロ金利政策期間中、企業の業績は少しだけだが上がっている。企業の業績が上がると社員の給与を増やすので、景気は良くなるはずなのだが、そうはなっていない。理由は企業が社員の給与を増やしていないからだ。まさにそれが理由でそれだけなのだ。日銀が一所懸命金融緩和しても景気が良くならないのは、企業が社員の給与をあげないから。これを聞いて悪者は企業だと言うのは早合点だ。実は給与が上がらない理由の半分は労働者の責任だからだ。
日本では労働者が給与を上げろと主張しない。米国では時給4000円でもトラックの運転手が集まらない。運転手は不足しているのではない。いるのだが「そんな安い賃金では働いてやらない」と自主的に失業状態を続けているのだ。そうすると物流業界は困るのでやがて賃金を上げる。そうなれば運転手は働いてくれる。日本では実質的な時給が500円でも運転手は集まる。これは最低賃金的には違法だが、運転手を雇うのではなく個人事業主の運転手に仕事を依頼する形にすれば法律違反ではなくなる。そんな安い給料で働かなければいいのにと子供なら思うだろう。でも働く人がいるのだ。この不合理は「囚人のジレンマ」をネットで検索すると分かるだろう。こんな状態では、日銀がいくらゼロ金利政策を続けても景気がよくはならない。日銀は無駄な努力を続けているのだ。気の毒に。
次に2.の今金利を引き上げたらまずいかという点。間違いなく倒産する企業が増える。一時的に失業者が増え景気は悪化する。しかし、長い目でみるとこれは景気回復のきっかけになる。倒産するのは経営者が経営努力をしていない企業だけだ。経営者が経営努力をしない企業は社員の給与を上げない。そんな企業が倒産してなくなってしまえば、その企業が生産していた製品やサービスをもっと良い企業が肩代わりして作るようになる。その結果、良い企業は人手不足になるので新たに人を雇う。ダメな企業が倒産して一時的に失業した人は、やがて良い企業に就職できる。しかも給料は増える。割を食うのは経営努力をせずに甘い汁を吸っていた経営者だけ。何も問題ない。これが世に言う生産性の向上というやつだ。

つまり、日銀は恐れずに金利を上げればよいのだ。ただ、甘い汁を吸っていたダメ企業の経営者連中は自民党の票田なので自民党は金利を上げるのには反対だろう。

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