2020年11月27日金曜日

ユーロから始まる世界経済の大崩壊

 著者のジョセフ・E・スティグリッツさんはアメリカ人。2001年にノーベル経済学賞を受賞している。私はノーベル経済学賞を胡散臭く思っている方で、これを受賞した人だからと言って、まともな経済感覚を持っているとは必ずしも言えないと思っている。しかし、本書を読むとスティグリッツさんは極めてまともな経済感覚を持っているのが分かる。知性のきらめきも感じられる。

詳しくは本書を読んでもらうしかないが、要するに多種多様な国や人をひとつのルール(例えば統一通貨ユーロ)でまとめようとするのは、恐ろしく難しいということが分かった。一つの国(例えばアメリカや日本)の政治や経済の舵取りをひとり(大統領や総理大臣)で間違いなく行うのはかなり難しいと思うが、優秀な人ならできないことはないと思っていた。しかし、ヨーロッパ全体の舵取りをひとりで行うなんて、絶対にできないと本書を読んで感じた。あまりに問題が複雑すぎる。ひとりでできないなら、複数人で力を合わせれば良いかというと、それもかなり難しい。歴史をひもとくと「3人よれば文殊の知恵」となるより「船頭多くして船山に上る」になる場合の方がはるかに多い。頭数をそろえれば問題が解決する訳じゃない。

本書に解決策は提案されている(著者の良心だと思う)が、これまでうまくいかなかったのと同じ理由で、その解決策が実行される可能性はほぼないだろう。全体の幸福を実現するためには、誰かがいくばくかの我慢をしなければならない。ただ、現在の民主政治ではその我慢をする人が黙っていない。我慢をしなければならない人が卑劣な悪党なら、強圧的な手段で黙らせても良いと思うが、そうでない場合はどうしたら良いのか。簡単には答は出ない。

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