2026年10月12日月曜日

現在も残る員数主義

員数主義とは、実態や中身がどうであれ帳簿や形式上の数(員数)さえ合っていれば問題ないとする考え方のことである。旧日本軍において、装備品などの員数検査(数があっているか調べる棚卸し)が厳しく行われたことに由来する。太平洋戦争敗戦の一因でもある。
 
私は40年前と30年前にこの員数主義を目の当たりにした。40年前の舞台は独身寮の自治会であった。独身寮は会社から一部補助がでるものの、独立採算性である。寮生から寮費を集め、それで食費、光熱費等の支払いをする。毎年持ち回りで会計担当が変わる。私が会計担当を引き継いだとき、帳簿と残金は合致しているとの会計監査報告を受け取った。しかし、帳簿と残金は明らかに違う。違うじゃないかと前任会計と前任会計監査に言うと、引き継いだときからそうなっていたと言う。10年分会計資料が残っていたので精査すると、ごまかしだらけだった。しかし各年度末の帳簿は合っていることになっている。まさに員数主義であった。ごまかしが多すぎてどこがどうおかしいかを資料にするのも大変だった。
 
私がごまかしを明らかにすると、私が責任を負うことになりかねない。 私は何も悪くないのに損である。歴代の会計がごまかしを黙認してきたのはそういう理由かと思った。
 
しかし、頓智で悪事から身を守るべきと常々思っている私がこのまま引き下がる訳にはいかない。ごまかしを黙認するのも気にいらない。ごまかしを清算して、なおかつ私が貧乏くじを引かない方法を模索した。 悪事を働いたやつは山ほどいる。中には転勤して行方が掴めないやつもいる。いちいち、そいつらを追跡して金を返せと騒ぐのは労力の無駄だ。幸い、寮の運営は黒字だった。ごまかしで消えたお金を全部合わせて、帳簿上の資産から引いても資産はかなり残る。そこで寮長と会計監査役と相談して、今年度に損金を計上してこれまでのごまかしを全部清算するという話を付けた。誰がいくら持ち逃げしたという完全なデータは作れないので、現存するお金と帳簿上の残資産の差額を損金とすることとした。寮生集会では以前からの不整合を清算するためであることと、現在の寮生には損害は生じないことを説明して承認を得た。そして今後ごまかしが生じないように、ごまかしの源泉となっていた現金での受け渡しを禁止する寮則改正も賛成多数で承認を得た。
 
結局私が骨折りをした分だけ貧乏くじを引いたことになるじゃないかと思うだろう。確かに私は通常の会計担当が行う処理の数十倍の処理を無給で行った。それだけなら貧乏くじだ。当然、そんなふざけた結果は許されない。私はちゃんと作業分の報酬をもらった。特別ボーナスとして時給10000円計算で過去10年分の書類を吟味した時間分の報酬を得た。これなら貧乏くじではない。当時の私の月給より多かったのだから。こんな高報酬をどうやって寮生集会で承認させたのか。まともに提案したら反対も出るし、案が通っても妬まれる。まともにやるのは上策ではない。誰がいくら持ち逃げしたかの完全なデータが残ってないことを利用した。そのデータの中に私の報酬を混ぜたのだ。私の報酬は不特定の窃盗犯の盗んだ金から出したことになる。
 
正義感の強い人なら、そんなことをせずにきちんと報酬として認めさせるべきだと言うだろう。しかし先ほど述べたようにそれでは私が妬まれるし、反対した人の気分を害する。この方法がいちばんうまい落としどころである。誰も損をしない。誰も嫌な気持ちにならない。来年度以降の会計担当は正しく職務を遂行できる。そしてその状況を作り上げた功労者の私は高報酬のために妬まれない。 ビジネスで言うところの三方よしである。
 
それから10年経った後にも、別のもっと大きな組織で歴代続く不正を発見した。それも知恵をしぼって解決したのだが、やはり同じように労働に見合う報酬はいただいた。 そのときの報酬は現金ではなく現物でいただいた。エリア88のマッコイ爺さんの手口を利用した。私は帳簿上は壊れたF-14のスクラップを引き取ったことになったのだが、実際に手にしたのはちゃんと空を飛ぶF-14だったのだ。F-14ではなく、高価な電子部品だったが。これも誰も損をせずに三方よしとなった。それ以降、その組織の帳簿はきれいになり、ごまかす必要はなくなった。国のためにも取るべき税金が取りはぐれていないように調整した。みんな私に感謝すべきだ。
 
40年前も30年前も不正を行っていた小物の悪党がたくさんいた。連中が間抜けなのは悪事の痕跡をしっかり残していることだ。これではいつかばれるだろうに。ばれる悪事をするなんてバカじゃないのか。私は不正をする必要がないのでしない。悪党から利益をかすめとる悪事?は必要ならやってもよいと思う。そして私は痕跡は残さない。それがエレガントってものだ。
 
他人の不正の責任をおっつけられて自殺に追い込まれる人がいる。真面目で正義感の強い人に多い。そんなことで自殺してはいけない。頓智を利かせて乗り越えよう。あなたが責任をとる必要はない。 頓智を利かせるというのは、意味のない法律にはしばられないということも含む。悪党から逃げて自分を守るのにルールを守る必要はない。

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