手がかりがひとつ届くたびに推定の精度があがっていくのは、カルマンフィルターやベイズ推定の根底にある考え方だ。
ベッセント長官が「日銀や当局が今後どう動くかをかなり正確に把握している」と発言した。自分は胴元だと啖呵を切った。日銀は次の会合で予定より3ヶ月早く利上げするかもしれないが、その後の利上げはずるずる引き延ばすだろう。利上げが最終的に辿り着くターミナルレートは1.5%から変えない。これは、日銀がこれが正解と思っているからではなく、迅速な利上げが正解だと思っていてもできないからだ。日銀に限らず、政府も正解の政策を知っているが実行はできない。 前に述べたようにこれが日本という国の特徴だ。以前決めたことが間違っていたと全員が思っても、事態が破綻するまでは昔決めたことは変えない。
ベッセント長官が啖呵を切らなければならないほど苛立っていたこと、そして日銀が啖呵に動じそうもないということから、日本は現路線を貫き通すだろうと思える。日本の実質金利が低い状態はずっと続くことが想定される。
低い実質金利がこの先10年20年と続くとどのような社会になるか。利益を出している一部の企業を除いて、労働者の賃金は上がらない。実質賃金は低下を続ける。途中でポピュリズム政党が一時的に政権を取るかもしれないが、ポピュリズム政党は自民党の行っていたばら撒きを強化するだけで構造改革はしない。さらに事態は悪化する。 誰が政治をやってもダメ、国民に革命を起こす気概はない、そもそも何かを改善する気が国民にはない。日本はだらだら衰退するだけで、ドラスティックな変化は何も起きない。いかにも日本らしい未来だ。
こうなると将来どんなにインフレが進んでもインフレ率は6%止まりとなる。名目金利はそれより1〜2ポイント小さい値にとどまる。外国の物価は今後も上がるし円安も進むのに日本のインフレ率が6%止まりなのを不思議に思う人がいるだろう。簡単に解説しよう。輸入物価が上がった分は品物の価格に転嫁される。しかし企業はそれ以上の値上げはしない。値上げをしないために、労働者の賃金を上げないで企業は頑張る。賃金を上げないと優秀な人は逃げ出してしまうが、99%の労働者は逃げ出さない。だから企業は値上げをせずにねばることができる。介護や運輸や建設などの人手不足業界はどうしようもない。賃金を今の2倍にしても人手不足は解消しないからだ。もちろん賃金を2倍に上げるなんてできる訳もない。あの業界は実質的に見捨てられる。労働者の賃金を削り続けることでインフレ率を低く維持するのが未来の日本の姿だ。 これまでもそうだったが、それを意地でも続けるということだ。
低賃金でもなぜ多くの労働者は逃げ出さないか。 逃げ出せないのだ。日本は一度雇用したら簡単にクビを切れない。そのために人を採用するときは非常に慎重になる。よほど好条件の人でないと中途採用しない。労働者は次の会社に入れるかどうかの保証がないので、賃金が低くても今の会社にとどまることを選ぶ。米国のように簡単にクビを切れる社会だと、「よくわかんないけど採用しとくか。ダメだったらクビにすればいいし。」が通用するので、職に付くのが簡単なのだ。日本型より米国型の方が労働者には優しい面がある。
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