2025年11月19日水曜日

たいていの現象は永遠に過渡現象だとわかればいろいろ面白い

経済学者には金持ちはめったにいない。これは数学者にも物理学者にも当てはまるので、経済学者だけが頭が悪い訳ではないのだが、経済学者はお金の流れを研究しているのにそれを自分で制御できないのはかなりカッコ悪い。彼らがなぜ金の流れを制御できないかというと、経済は過渡現象なのに定常状態だと仮定して理論を作っているからだ。経済に限らず、世の中のたいていの現象は実は過渡現象なのだが、ここは経済を中心に論じる。

経済学では、物事は何らかの平衡点に落ち着くという理論が多い。あらゆる価格決定曲線がそうだし、ブラックショールズ方程式もそうだ(IVの決め方へのツッコミはおいておいて)。日米金利差や経常収支がある値だとドル円はいくらになるというような類の話もそうだ。物事はサイクルであるという理論も多い。好況と不況が何年周期で交互に訪れるといったような類だ。物事が平衡点に落ち着いたり、決まった周期に従って変化していく様子を定常状態と言う。ところが実際の経済では、インフレ率やら為替が平衡点に落ち着いて安定することはないし、好況と不況の周期が決まっていることもない。つまり実経済は定常状態にはならない。実経済は過渡現象であり、過渡現象である状態が永遠に続くのだ。これをカオスと呼ぶ。

なぜ定常状態にならないかと言うと、経済活動は人間が関わっていて、人間の行動はひとりひとりの心理のせいでばらつくので経済活動全体が複雑系になってしまうからだ。複雑系の振る舞いは、たいていカオスになる。

経済学者を擁護しておくと、経済がカオスだとしてもカオスのまま扱うと科学にならないからできないのだ。近代科学の条件には「繰り返し確かめられること」「追試できること」がある。カオスな対象ではそれができない。何度やってもカオスになるということは確かめられるが、それだけでは科学としてまとめあげるのは難しい。だから経済学の理論が定常状態を前提に組み立てられているのはある意味しかたがないことだ。

ここまでの話だけなら面白くないし実利もない。こうすれば確実にお金が増えるというルールが見えないから面白くないのも仕方がない。面白いのはここからだ。経済活動が永遠に過渡現象であると達観すると、重要なのは未来の状態の値の予想ではなく、状態変化の速度の予想であると気づく。ここに気づけば、思考力の使い道を変化速度の予想に集中させられる。そうすると変化速度の予想の確度が上がって、これはお金を増やすことにとても役立つ。ある会社の株価が遠い将来に上がるか下がるかはたいていの人はうまく予想できる。いつ上がるか下がるかが分からないから、みんな儲けるのに苦労しているのだ。

お金を直接増やす以外のことにも役立つ。例えば居住地の選択に役立つ。地方は住居費が安いので経済的には有利だ。しかし人口減少が進めば店や病院などの生活に必要な施設が減って住みにくくなる。そうなることがわかっているからって、最初から都会に住んでしまうと高い住居費のせいでお金は貯まらない。うまいやり方は、最初は地方に住んでお金を増やして、頃合いを見計らって都会へ引っ越すことだ。その頃合いをうまく選ぶことに変化速度の予想能力は役立つ。これは日本から外国へ引っ越すときにも同じ考え方ができる。日本にずっと住むのは治安や経済の面で不安がある。だからと言って今すぐ外国に引っ越すのが最善かというとそうでもない。日本の治安が住むのに困るくらい悪くなるまでには間がある。それまで物価の安い日本に住むのは経済的に得になる場合がある。また外国もある国が永遠に住みやすいなんてことはあり得ない。どの国にも住みやすい旬がある。旬を渡り歩けた方がよい。食べ物も旬のものがよいのと同じだ。このような選択をするにも、物事の変化速度を予想できる力が役立つ。

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