2024年8月31日土曜日

個人差が大きすぎて広告の協調フィルタリングが役に立たない

ネットの広告がうざい。しかもかなりアホだ。私は広告を見せられるのは嫌いだが、PC部品の広告とか音響製品の広告とかパワーボートやヨットの広告とか車やバイクの広告とか飛行機のチケットの広告なら、見せられてもそこまで腹は立たない。そういうのを見せれば良いのに、なぜか健康食品の広告と衣料品の広告ばかり出てくる。私はクッキー等で個人情報を取得されるのを気にしないので、設定は最もオープンにしている。私がどんなウエブページを訪問したかは広告業者にはダダ漏れのはずだ。それを使って学習しろよと思う。

30年以上前に仕事の上でデジタルコンテンツのマネタイズが課題になった。当時はコンテンツにお金を支払うという文化は浸透しておらず、コンテンツを無料で見せて物販やサービス販売につなげるにはどうすればよいかが課題だった。要するに広告だ。利用者の興味をひかない広告を見せても効果は上がらないから、興味のある広告を優先的に見せないといけない。そのために当時流行した技術が協調フィルタリングだ。

協調フィルタリングは「同じような趣味の人は同じような製品を好むだろう」という仮説がベースになっている。同じような趣味の人を見分けるには、以前に買った商品やサービスを調べて似ている度合いを判定することで行う。買った商品が似ているなら同じような趣味の人だろうということだ。ある人に広告を見せるときは、同じ趣味の人が買っている製品の中からある人がまだ買ってない製品を選んで広告として見せるのが協調フィルタリングを利用した広告の仕組みだ。

これで実験をしてみたら、製品のジャンルが狭いときは成功した。楽曲のみの販売とか、書籍のみの販売で協調フィルタリングを用いた広告を提示するとユーザーの広告をクリックする回数が増えた。ところが製品のジャンルを広げるとうまくいかなくなった。デパートのように広いジャンルの製品を扱っている(今ならアマゾンや楽天市場だ)場合に協調フィルタリングを用いた広告を提示してもクリック回数は増えなかった。理由は、あるジャンル(例えば楽曲)の趣味が同じ人でも別のジャンル(例えば食べ物)の趣味が同じとは限らないからだ。まあ当たり前の結果だ。

協調フィルタリングの欠点を補うために、協調フィルタリングとルールベースフィルタリングが互いの利点を減じることなく組み合わせられるフィルタリング技術の特許を書いた。ルールというのは「女性ならファッションを好む」「高齢者は健康食品を好む」みたいのものだ。これで広告のクリック率は多少はマシになったが、満足ゆくものにはならなかった。この特許は出願からもう20年以上経ったので、特許の期限は切れている。

協調フィルタリングより優秀な広告選択アルゴリズムは現在もないので今でも使われている。そのため、最初に書いた的外れの広告ばかり提示している現在の状況となっている。30年間でコンピューター技術はずいぶん進歩したのに広告の提示技術は全く進歩していない。もうあきらめて広告をいっさい止めるというのが最も合理的でコストもかからずユーザーもみんな喜ぶ解だと思うが。

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