2024年4月13日土曜日

なぜ日本軍は対戦車砲を速射砲と呼んでいたのか

満州でも東南アジアでも旧陸軍は対戦車砲を速射砲と呼んでいた。普通に対戦車砲と呼べばよいのになぜ速射砲と呼ぶのか30年くらい謎だった。速射砲とは素早く装填できてどんどん撃てるという意味だろうか。

ところがひょんなことから理由が分かった。もうひとつ長く謎だったのが、英軍の野砲の呼称だ。57mmとか76.2mmとか口径(この口径という言葉も複数の意味があって分かりにくいのだが、それは別の話)で呼べばよいのに6ポンド砲とか17ポンド砲とか砲弾の重さで呼ぶ。同じ76.2mmでも弾種によって砲弾の重さは違うだろとツッコミたい。それはともかくこれらの野砲はOrdnance QF 6-pounderとかOrdnance QF 17-pounderと英語では呼ぶ。この名称中のQFがQuick Firingの略だ。Quick Firingを日本語に訳すと速射だ。つまり英国の野砲の名称を直訳したので日本軍では直接照準の野砲を速射砲と呼ぶのだ。やっと謎が解けた。

Quick Firingは素早く撃てるという意味だが、薬莢を使う砲弾を撃つ砲をQuick Firing、薬嚢を使用する砲弾を撃つ砲をBreech-loadingと区別したのが最初だ。確かに薬嚢を使うよりは薬莢を使う方が、装填が1アクションで行えるので素早くできる。薬莢を使う砲弾もだんだん大型化してきて必ずしも素早く撃てる訳ではなくなったものもあるが、薬莢を使う限りはQuck Firingと呼ばれる。だから英国では直接照準の砲も間接照準の砲もQFの名称が付いている。日本軍は直接照準の砲は速射砲だが、間接照準の砲は加農砲(カノン砲の当て字)と呼んだので英国とは少し違う。

次の疑問はOrdnanceというのは軍事メーカー名なのかどうかだ。他国では砲の名称の最初にくる単語は製造メーカー名だ。ドイツの野砲はラインメタル何とか砲という名称が多いし、スウェーデンの野砲はボフォース何とか砲という名称が多いように。ところがこれが違った。Ordnanceは固有名詞ではなく普通名詞で「軍用の」という意味だ。じゃあ、Ordnance QF 17-pounderはどのメーカーが作ったのか調べたら、なんと記録がない。英国の軍事メーカーが作ったものはどれもOrdnance QF 17-pounderとかOrdnance QF 25-pounderとかのようにOrdnanceを付けて呼ばれるとのことだ。

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