2023年9月14日木曜日

持続可能な社会を創るためには宵越しの銭は持たぬ暮らしがよい

宵越しの銭は持たねえというのは江戸っ子の心意気を表すだけの言葉と思われがちだが、もっと深い意味がある。鎖国していた江戸時代の日本は持続可能な社会を実現していたが、そのためには宵越しの銭は持たないことが経済学的に重要だった。このことをうまく解説してくれている書籍が長沼伸一郎氏の現在経済学の直感的方法だ。詳細はこの書籍を読んでもらうとして、要点を私のトンデモ意訳で抜粋しておく。

長沼氏の著書ではわかりやすさのために経済活動をデパートの商売として説明している。デパートでは様々な品物を仕入れて売っている。その売り上げが1日100万円だとする。この売り上げをデパートの店員さんと納入業者で日当として公平に分ける。店員さんと納入業者の収入を合わせると100万円になる。店員さんと納入業者はお金を持って家に帰る。

次の日に店員さんと納入業者の奥さんはお金を持ってデパートに買い物に来る。この世界ではデパートしかお店がないので、食べ物も着る物もデパートで買う必要がある。奥さんたちがお金を全部使って買い物したらデパートの売り上げは100万円になる。そして店員さんと納入業者は昨日と同じだけのお金を持って家に帰る。以下は同じことの繰り返し。これが持続可能な社会だ。

長沼氏の著書では、奥さんたちが貯金を始めたらどうなるかを書いている。もし奥さんが収入の1割を貯金してしまい買い物に9割しか使わなかったら、デパートの売り上げは90万円に減る。そうなるとデパートで働く店員さんと納入業者の収入は1割減ってしまう。その日に家に持ち帰ることができるお金は90万円だけだ。その減った収入のうちさらに1割を貯金してしまったら、デパートの売り上げは81万円に減り、店員さんと納入業者の収入はさらに1割減る。これを続けていくとデパートの売り上げはやがてゼロになってしまい、店員さんも納入業者も全員が失業する。社会の破滅だ。

貯金をタンス預金にしてしまうと上記のように社会の破滅は必至だが、銀行に預けると話はちょっと違う。銀行は預かったお金をデパートや納入業者に貸し出す。デパートや納入業者は借りたお金で事業を拡大して売り上げを増やそうとする。首尾よく売り上げが増えるとデパートの店員さんと納入業者の収入が増えて、彼らの奥さんが1割の貯金をしたとしても残り9割を買い物に使うだけでデパートはやっていける。これが現在の社会が破滅せずに回っている理由だ。私の意訳では借りたお金の使い方の説明に不正確なところがあるので、正確さを望む人は長沼氏の著書を読んでほしい。

長沼氏の著書にも指摘されているが、貯金をする人が必ずいる現在の社会は売り上げが増え続けないと破綻する。こぎ続けないと転んでしまう自転車のようなものだ。構造的、本質的に問題を抱えていることになる。この問題を解決して持続可能な社会を創るのは大変難しいが、問題解決に挑み続けないと未来はない。

それはさておき、ここからは長沼氏とは関係なく私の意見になる。江戸っ子のように稼いだ金をすぐに使ってしまう人ばかりであれば、持続可能な社会を構築する難易度は下がる。貯金するにしても銀行に預けてくれれば、それを誰かが借りて事業に投ずることで社会は危ないながらも走ってゆける。しかし金をタンス預金にしてしまったら、それは上述したように社会を破滅させる。となると、特殊詐欺の犯人がタンス預金を盗んでそのお金を使うのは社会の破滅を救ってくれていることになる。彼らは社会の破滅を遅らせるために神が出現させたものだろう。不条理に見えることでも大局的視点で見れば意外と合理的だったりする。なるほど宇宙はうまくできている。

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