2020年10月18日日曜日

HGウェルズ タイムマシン

 ウェルズのタイムマシンはタイムマシン物の元祖だが、読んだことがなかった。kindleで無料で読めたので読んでみた。近頃のタイムマシン物は過去に行く話ばかりだが、ウェルズのタイムマシンは未来に行く話だった。1895年に発表されたにも関わらず、未来は格差が広がることが描かれていた。先見の明のある人だった。他の作品で原子爆弾や遺伝子書き換えなどにも言及したらしい。もっとも未来を悲観するあまり、社会主義に惹かれていたようで、スターリンと会談したこともあったらしい。社会主義の悲惨な結末が明らかになるのは1991年だから、1946年になくなったウェルズには予想できなかったのだろう。ウェルズが学んでいたのは生物学で、経済学を特に学んだわけではないのに格差が広がることが予想できたのには感心する。格差が特に社会問題になったのは2000年以降だ。そして格差は縮まるどころか、加速度的に拡大する。格差を縮める力があるのは富裕層で、その富裕層が格差が縮まることを望んでいないから縮まる訳がないのは自明なのだが。富裕層どころか、貧困層でさえ格差が広がる方へ動いている。若者はSNSやYoutubeに時間を取られ、貴重な学ぶ時間を放棄している。学ばなければ、格差を問題視することもできず、格差を縮める意思のある候補者に投票することもできない。目先の金銭欲(しかもごくわずかな)にとらわれ、無能な為政者を選ぶか、棄権して選ぶことすら放棄する。ウェルズが今に生きていてタイムマシンを書いたとしても、描かれた未来の様子は1895年のものと変わらなかっただろう。

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