2020年1月6日月曜日

佐藤大輔 征途

正月休みを利用して征途を読み終えた。1993~1994年の作品だったが、去年まで知らなかった。著者の佐藤大輔氏の名前は、ボードゲーマーだったとき(1980年代)のレッドサンブラッククロスで知っていたが、その後小説家に転向したことは知らずにいた。小林源文氏の作品に出てくる巨漢が佐藤大輔氏をモデルにしていたのを知ったのはずっと後だった。
征途は660ページもある電話帳のような本だった。面白くて一気に読みたかったが、体力的に叶わず、3日かけて読み終えた。レイテ湾突入が栗田司令長官の偶然の戦死により成った(これは昭和20~30年代生まれにとっては溜飲もの)ことから、米軍の進撃が少しだけ遅れ、そのために終戦前にソ連が北海道に上陸し占領されてしまう。日本が南北に分かれてしまうという衝撃的な設定だ。レイテで勝っても負けても、日本が負けることには変わりないという冷酷な事実に気付かされ、レイテで勝ったばかりに日本が南北に分断されるという悲劇につながると言われ、仮想戦記で一時的に夢見心地になっていたい気分が現実に引き戻される。
南北日本は最後を除いて日本本土で直接戦火を交えることはなく、南側は史実と同様かそれ以上の速度で経済発展を遂げ、北側はソ連の衛星国としてソ連本国以上に成功する。それぞれベトナム戦争にも湾岸戦争にも敵対国として参加し、そこで戦火を交える。大和は健在で、ベトナム戦争にも湾岸戦争にも参加して活躍するのは素直にうれしい。
登場人物の名前やコールサインはニヤっとするものが多く、読みながらそれを拾っていくのが楽しい。悲惨な内容だが、エンターテインメントとして秀逸だ。
征途を読み始めたのは図書館で偶然見つけたからだが、読み始めてから佐藤大輔氏が2017年に死去していたのを知った。まだ52歳だった。小説版レッドサンブラッククロスは完結していない。惜しい人をなくした。もっと書いて欲しかった。

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