番組ではエキスパンダーブリードサイクルを使った部品点数の少ない新エンジンの開発をメインに紹介していた。エキスパンダーブリードサイクルを使った理由は理解できるが、第二次大戦中に精密な誉エンジンを作って失敗しているのと同じに見えた。もっと大らかな設計の火星エンジン的なものでよかったのではないか。つまりロシアのソユーズ的なエンジン設計でよいのではないか。
以上のことは私の直感なので、詳しいところはgeminiに調べてもらった。以下の回答を得た。私の直感はH2Aに対しては正しかったが、H3に関しては間違っていた。H3が安くならないのは打ち上げ回数が少ない問題が主要因だった。
---geminiの回答---
日本の宇宙開発の象徴であったH2Aロケット、およびその後継機として期待されるH3ロケットは、その高い打ち上げ成功率と技術的な洗練度において世界的な評価を確立しているものの、国際的な商業輸送市場におけるコスト競争力という点では、米国やロシアのシステムに対して依然として大きな課題を抱えている。H2Aロケットの打ち上げ費用は基本型で約100億円とされており、これに対して米国のスペースX社が運用するファルコン9は、民間市場において約6200万ドルという価格を提示しつつ、再使用技術の進展によってさらにその実質的なコストを低下させている。また、ロシアのソユーズロケットは、半世紀以上にわたる運用と数千機規模の生産実績によって、製造原価そのものが極めて低く抑えられており、これらと比較した場合に日本のロケットが高コストに見える理由は、単一の要因ではなく、技術、産業構造、地理、そして社会的な制約が重層的に絡み合っていることに求められる。
H3ロケットの開発において日本が目指したのは、このH2Aの打ち上げコストを半減させ、約50億円という世界基準の価格帯に到達させることであった。この野心的な目標を達成するためには、従来の高性能化を追求する姿勢から、製造の簡素化、民生品の活用、そして運用のスマート化へと、日本のロケット開発思想を根本から転換する必要があった。しかし、これを実現する上では、日本の宇宙産業が抱える構造的な脆弱性や、米国のように広大な射場と膨大な打ち上げ頻度を持たないという地理的・経済的制約が、依然としてコスト削減の限界を規定している側面がある。
ロケットの打ち上げ費用を比較すると、H2Aは約100億円、H3の目標は約50億円、米国のファルコン9は約6200万ドル(約90億円前後)である。H2Aは国内政府ミッションが主体であり、H3は海外商業市場も狙う方針だが、ファルコン9は自社のスターリンクを含む膨大な需要を持つ点が異なる。エンジンについても、H2Aは複雑な2段燃焼サイクル、H3は簡素なエキスパンダーブリードサイクル、ファルコン9は再使用重視のガスジェネレーターサイクルを採用している。打ち上げ頻度は、日本が年数回であるのに対し、ファルコン9は2024年実績で年100回を超えている。
ロケットのコスト削減において最も強力な武器となるのは量産効果である。日本のロケットが高コストである最大の原因の一つは、この量産効果が極めて効きにくい環境にあることである。日本の宇宙輸送システムは、主として国内の政府衛星や探査機の打ち上げを目的として設計されており、その需要は年間数回という極めて限られたものである。これに対し、スペースX社のファルコン9は、自社で展開するスターリンクの打ち上げという莫大かつ継続的な内部需要を抱えている。この需要がロケットの製造ラインをフル稼働させ、打ち上げ頻度を劇的に向上させている。ファルコン9は2024年時点で、年間100回を超える打ち上げを達成しており、これは日本のH2Aロケットの全運用期間における総打ち上げ回数をも上回るペースである。この圧倒的な頻度は、射場の維持費や管制要員の人件費、開発費の償却といった固定費を、1回あたりの打ち上げコストから極限まで薄めることを可能にしている。
一方、日本のH3ロケットは、年間6回程度の打ち上げを安定して継続することを目指しているが、この回数では製造ラインを常に稼働させ続けるには不十分であり、工場の稼働率の低さが1機あたりの価格を押し上げる要因となる。また、打ち上げ頻度が少ないことは、製造現場における習熟効果の鈍化も招く。頻繁な打ち上げがあれば、各工程での非効率性を即座に発見し、次号機へとフィードバックできるが、打ち上げの間隔が数ヶ月から1年近く空くような環境では、技術の継承や改善のスピードがどうしても遅れてしまう。
技術的な側面から日本のロケットコストを分析すると、高性能を追求しすぎるがゆえの複雑さがコスト高を招いていた側面が強い。H2Aの第1段に使用されてきたLE-7Aエンジンは、2段燃焼サイクルという極めて高度な方式を採用している。この方式は燃費に優れるが、極低温から超高温、そして超高圧に耐える複雑な配管や、精密な制御システムが必要となり、製造コストを押し上げてきた。H3ロケットでは、この思想を転換し、1段エンジンに日本独自の方式であるLE-9エンジンを採用した。この方式は液体水素燃料を燃焼室の壁面で温めて膨張させ、その力でタービンを回して燃料を送るシンプルな仕組みであり、部品数は従来のエンジンと比較して2割以上削減され、製造工程が大幅に効率化された。燃費性能はわずかに犠牲になるが、圧倒的な信頼性と低コストを優先するという実利的な選択がなされたのである。
製造コストを削減するためのもう一つの重要な柱は、部品調達と加工方法の革新である。これまでのロケット開発では、宇宙専用に設計された高価な部品が多用されてきた。H3ロケットでは、日本の産業界の強みである自動車用部品を中心とした民生品を積極的に採用している。自動車用部品は大量生産されるため、信頼性と低価格が両立されている。これを電子部品等に適用することで、部品コストを劇的に下げることに成功した。また、加工技術においては3Dプリンターの導入が大きな役割を果たしている。従来は高度な職人技と膨大な工数がかかっていた複雑な形状の部品を、3Dプリンティング技術によって一体成型し、部品点数の削減と工期の短縮を実現した。
日本のロケットコストが依然として米国に及ばない最大の要因は、第1段ブースターの再使用技術の有無にある。スペースX社のファルコン9は、打ち上げた後の第1段を垂直着陸させて回収し、整備した上で再び打ち上げている。ロケットの製造コストにおいて、第1段ブースターは約70パーセントという最大の比重を占めており、これを使い捨てる日本に対し、再利用するスペースXは機体そのものの償却コストにおいて決定的な優位に立っている。スペースXの試算によれば、15回程度の再利用を仮定した場合、一度の打ち上げにかかる実質的な費用は、新品を製造する場合と比較して劇的に安価になる。これに対し、H3ロケットは依然として使い捨て型であり、毎回高価なエンジンと機体を新造しては海に捨てていることになる。日本が再使用技術に踏み切れなかった背景には、打ち上げ頻度の低さから、回収のための設備維持が逆にコスト高になってしまうという判断があった。しかし、ファルコン9が1段目を30回以上も再利用する段階に到達した現在、この経済的損益分岐点は大きく変化している。
日本の宇宙産業サプライチェーンの維持もコストを押し上げる一因である。日本の宇宙産業は、主契約者の下に多くの中小企業が連なる構造だが、生産数が少ない製品に特化した部品製造は企業にとって経営リスクが大きい。近年、採算性の悪さを理由に撤退する企業が相次いでおり、これが特定の重要部品の価格高騰や供給遅延を招いている。さらに、海外からの部品調達には地政学的リスクや輸出管理規制の問題が付きまとう。米国のEAR規制などの対象となる部品は、輸出許可の遅延によってプロジェクト全体が停滞するリスクがあり、これが経済的な打撃となる。
対照的に、ロシアのソユーズロケットは、枯れた技術の徹底した量産によって低コストを実現している。ソユーズは1960年代の基本設計を受け継いでおり、製造原価は約2000万ドルから2500万ドル程度という非常に低い水準にあると推定される。数十年前から変わらない頑健な設備で何千回も作り続けてきたため、設備費用は既に償却済みであり、現時点でのコストは純粋な材料費と人件費、そして最小限の運用費だけで済む。このように、最新技術による効率化とは異なる量産実績に基づいた低コストモデルが存在している。
日本固有の地理的・社会的制約も運用コストに関わっている。種子島宇宙センターの周辺海域は豊かな漁場であり、打ち上げ時期が地元漁協との合意に基づき制限されてきた。この制限は射場設備の稼働率を低下させ、1回あたりの固定費負担を増大させる要因となっていた。また、名古屋周辺の工場で製造された機体を船で種子島まで輸送するコストや、台風などの気象条件による延期リスクも、地上要員の待機コストを押し上げている。
H3ロケットでは、これらの制約を克服するため、運用の簡素化が図られた。機体に自律点検や自動点検の仕組みを導入することで、打ち上げ当日の管制要員をH2Aの100名から150名規模から、30名から40名程度にまで削減することに成功した。これは、限られた射場設備を使って効率的に打ち上げを行うための重要な改善である。
結論として、日本のロケットが米国やロシアと比較して高コストである原因は、限られた打ち上げ機会の中で高い成功率を維持するために構築された、複雑で高価なシステムと産業構造に起因する。H3ロケットは民生品活用や製造工程の合理化により、使い捨て型としてのコストを限界まで引き下げようとしているが、スペースXが実現した再使用技術や圧倒的な打ち上げ頻度による経済性に対抗するには、さらなる産業構造の改革と、将来的な再使用型システムへの移行が不可欠である。
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