2025年4月29日火曜日

なぜきさげ加工によりミクロンオーダーの精度が出るのか

きさげ加工の手ほどきを受けたのは45年前だ。のみのような形の刃物(工具)で人手で削る作業だ。単調で疲れる作業だった。加工面にはうろこのような模様ができる。これで工作機械で加工するより精度が出ると教わったのだが、それが不思議だった。単に使っている工作機械がボロだからきさげ加工が必要になるんでしょくらいに思っていた。

ところが45年経ってテレビ東京で三井精機の紹介番組を見たら、今でも最高精度の工作機械で削るよりもきさげ加工の方が精度が出るとあった。驚きだ。きさげ加工については三井精機のページに詳しく解説されている。

きさげ加工では刃物ではつった部位だけを1〜3ミクロン削り取れることがポイントだ。出っ張っている箇所を1回こするとそこを1〜3ミクロン削れるということだ。刃物(バイト、ドリル、フライス、エンドミル等)では局所的に削り量を制御することはできない。きさげ加工で精度を出せるのは狙った箇所だけを削れることが理由だったのかとやっと腑落ちした。

数学の講義もそうだったが、それがどのように役立つのかの理由を最初に教えないから学生の興味を引かない。興味を引かないから理解も浅い。ただ削れと言われて身体を動かしただけではきさげ加工の本質はわからない。「狭い面積を微少量削るのは工作機械ではできないんだよ」と言ってくれればその場で納得したのに。日本の大学の先生は教える人としては落第の人が多い。彼らは教えるのは下手だが研究はバリバリやっているかと言うと、そういう先生もかなり少ないのが残念だ。

大学教育だけでなく、楽器演奏にしてもオートバイの運転にしても教えるのが下手な先生ばかりだ。実は本当の先生というのは誰にでもできることではない。万人にひとりくらいしか持たない教える才能が必要だ。それなのに並の人を先生にするから生徒が困る。

0 件のコメント:

コメントを投稿