2025年7月7日月曜日

無駄な個人金融資産のおかげで日本はインフレから免れている可能性

2025年3月期の個人金融資産は2195兆円だった。内訳は以下の通り。
  • 現金・預金     1120兆円    51.0%
  • 保険・年金       544兆円    24.8%
  • 株式等             268兆円    12.2%
  • 投資信託          131兆円     6.0%
  • その他(債券等)132兆円   6.0%
個人金融資産2195兆円のうち、高齢者が1100兆円を所有している。金融資産の5割を人口の3割でしかない高齢者が持っている。タンス預金は個人金融資産2195兆円に含まれない。タンス預金は100兆円だと推定している人がいる。こんなに高齢者がお金を持っている理由は日本の社会主義政策のせいだが、今回は社会主義政策の問題については議論しない。

社会に出回っているお金であるM3マネーストックが総額1600兆円だ。これは信用創造で作られたお金を含むがその影響の議論は一旦置いておく。日本はこれまで日銀引き受け国債としてのべ600兆円のお札を印刷してきた。M3マネーストック1600兆円のうち600兆円がプリントごっこで刷ったお金ということだ。本来お金は1000兆円しかなかったのに、おもちゃのお金を600兆円たして1.6倍に水増しした。単純に考えればお金の価値は薄まって、物価は1.6倍になっているはずだ。しかし物価の値上がりは2019年まではゼロで、2025年でもせいぜい1.2倍でしかない。なぜ日本ではインフレが進まなかったのか。

以前のブログでも述べたが、この理由は高齢者がお金を死蔵している+銀行が有効な貸出先を見つけられないからだ。タンス預金はまさに死蔵されている。銀行預金であってもそのお金を企業に貸し出して産業の発展のために投資できないとそれは実質的には死蔵されていることになる。死蔵されているお金は存在しないのと同じだ。日本ではプリントごっこでおもちゃのお金を印刷したのだが、その大部分が死蔵され存在が消えてしまった。そのため社会全体ではお金の価値が希薄化せず、これまでインフレが進まなかった。

この状況は長い間続いてきたが、お金を死蔵している高齢者が死んでそのお金が相続されて子孫に渡ると状況が変わる。遺産を相続した子孫が裕福ではない場合は相続したお金を使う。お金は社会に流れ出し、お金の希薄化が始まる。その結果、インフレが進むだろう。

MMTではお金を印刷してもある程度は平気だと言われていた。その実例として米国と日本が挙げられていた。米国が平気なのは軍事的・経済的信用により米ドルが基軸通貨だからだ。日本が平気なのは上述したように国民がお金を死蔵しているからだ。どちらの国も平気だった理由が揺らぎつつある。

以下は蛇足であり本論とは無関係だ。最初に挙げた個人金融資産の内訳を以前の数値と比べると、現金・預金が減り、株式と投資信託も減っている。そして保険・年金が増えている。現金・預金が減ったのはインフレに対応したいという国民の意思の表れだ。株式と投資信託が減って保険・年金が増えているのは興味深い。自らリスクを取りたくない日本人の性質が読み取れる。保険会社や年金運用機関は株式などのリスク資産でお金を運用している。保険会社は運用リスクを負担する代わりに、リスクプレミアムの一部を受け取っている。

2025年7月6日日曜日

たとえ維新が議席を多数獲得しても日本の衰退・滅亡の未来は変わらない

参院選で社会保障制度の改革を主張しているのは日本維新の会だけだ。そのため現役世代から評価されている。今回の選挙で維新は議席数を伸ばすかもしれない。それは良いことなのだが、残念ながらそこまでだ。維新の議席が少し増えたくらいでは日本の衰退を止めることはできない。

社会保障制度の歪みは日本人の甘えの文化から来ている。社会保障制度を改革できても(まず無理だが)、甘えの文化を断たなければ未来は変わらない。甘えの文化を断つことは日本人にはできない。

アルゼンチンは100年以上前はGDPが世界一だった。母を尋ねて三千里のマルコの母親がヨーロッパからアルゼンチンへ出稼ぎへ行ったのは、それが理由だ。アルゼンチンは豊かな富を背景に弱者救済の社会主義的政策を続けた。そして今のように落ちぶれた。日本はアルゼンチンの通った道をたどっている。

アルゼンチンでは2023年にハビエル・ヘラルド・ミレイ氏が選挙で勝って大統領に選ばれた。ミレイ大統領は大統領就任から1年半でアルゼンチンの経済を立て直しつつある。ミレイ大統領は人間が楽して生きようとする姿勢を否定した。国民が国にたかる姿勢を批判した。公務員を減らした。そして教育へ投資した。これらはまさに日本でも必要とされている政策だ。日本維新の会が躍進したら、ミレイ大統領のような指導者が現れて日本がよくなるかもと夢想したくもなる。しかし現実は残酷でそのような幸運は起きない。

アルゼンチンの人口ピラミッドはピラミッド型から釣鐘型への移行期だ。高齢者は全人口の6%しかいない。このためにミレイ大統領は選挙で勝てた。

日本の人口ピラミッドは逆ピラミッド型だ。高齢者ほど人数が多い。ミレイ大統領のような人が立候補しても日本では選挙で勝てない。日本の衰退は行き着くところまで続く。誰にも止められない。

国民一人一人が甘えから決別する覚悟を持てば状況は変わるが、そんなことは日本では起こらない。起こり得るのならとっくの昔に起こっている。

2025年7月5日土曜日

バンダルスリブガワンではバスよりタクシーが便利

ブルネイの首都バンダルスリブガワンで移動するにはタクシーそれもタクシーアプリDARTが便利だ。公共バスは定額1ブルネイドル(113円)と安いが、google mapでバスの経路検索ができない。あれができるのは誰かがバスの路線図と時刻表をgoogleに教えているからだが、ブルネイではその誰かがいないらしい。google mapのバス経路検索が使えないとなると、路線図が頭に入ってない旅行者がバスを利用するのは難しい。ブルネイ固有のタクシーアプリDARTを使うと地図上で乗車地点と降車地点を選ぶだけで言葉がわからなくてもタクシーに乗れるので旅行者でも楽に移動できる。しかもバスに比べてそれほど高くもない。

DARTインストール:
  1. app storeでDARTを選んで入れる。
  2. 電話番号で認証する。日本の電話番号でもできる。
  3. 支払い手段のクレジットカードを入力する。
  4. 以前はドライバーとの連絡にWhatsAppのインストールが必要だったが、今のDARTアプリではアプリにWhatsApp相当のチャット機能が内蔵されたので不要だ。
手配:
  1. 地図上で乗車地点を指定する。他のタクシーアプリと違うのはGPS非対応であることだ。自分の現在位置を自動で地図上で示してくれない。地図が頭に入ってないと乗車地点を指定できない。そこでgoogle mapを表示して自分の現在位置を確認して乗車地点を指定する。google mapを表示するもう1台のスマホがあると便利だ。
  2. 降車地点も同様に地図上で指定する。
  3. 車種が2種類提示されてそれぞれの料金が示されるので、好みの車種を選ぶ。
  4. 料金支払い手段をcashかチャージからかを選ぶ。チャージからを選ぶとクレジットカードからチャージできるので楽だ。以前は切りのよい金額でしかチャージできずに不便だったが、今は任意の金額をチャージできる。チャージは料金支払い手段を指定するときにできるので、予めチャージしておく必要もない。
  5. 確定を押す。
乗車:
  1. ドライバーが選定されたら、たいていすぐにチャット機能で連絡がある。待っている場所がわかりにくい場合は聞かれるので、"We are at the parking of XXX museum."みたいに答える。英語はブロークンでよい。
  2. アプリに車種、車の色、ナンバーが表示されるのでその車が来るのを待つ。
  3. 車が来たら自分の名前を告げて自分が呼んだタクシーか確認してから乗る。車のナンバーで確認しているなら間違いようがないが。
降車と支払い:
  1. 乗車したらアプリの表示が「乗車中」に変わる。
  2. 目的地に着いたら降りるだけ。特に支払いの手続きはない。

2025年7月1日火曜日

ブルネイ ガドン ナイトマーケット へ行く時の必需品は割り箸とティッシュ

ガドン ナイトマーケットは有名な夜市だ。台湾の夜市と違ってお店も通路も屋根の下にあるので、雨が降っても平気だ。
ブルネイの人はみんなそうだがフレンドリーなので英語が通じなくてもお互いにわかろうと努力して注文が成功する。甘いもの屋のやさしいおじさん。
おいしいサテの店。一本1ブルネイドルとナイトマーケットにしては高級価格。
5ブルネイドル(600円)あれば、おなかいっぱいになるくらい食べられる。購入すると水をはじく紙で包んでくれてビニールの手提げに入れてくれる。それをマーケット内のあちこちにあるテーブルで温かいうちに食べる。箸やスプーンはつけてくれないので、あらかじめ割り箸を持ってゆくとよい。サテ(串焼き)の串はタレでベトベトなので、串を持った指はベトベトになる。そこでポケットティッシュ、できれば濡れティッシュを持っていくとよい。食べ終わったあとのゴミは紙もビニールもマーケットの外周にあるゴミ箱に捨てる。指を濡れティッシュで拭いた後もまだベトベト感は残る。それが気になる場合はマーケットの外周に何箇所もある手洗い所を利用するとよい。普通は下の写真のように水道の蛇口しかないが、たまにポンプ石鹸が置いてある手洗い所もあった。

2025年6月29日日曜日

事務処理専任社員が廃止されて労働生産性が低下

20年前に事務処理専任社員が廃止された。それまでは各部署に事務処理専任社員がいた。社員と書いたけどベテランの管理職が付く役職だ。勤怠管理をはじめ契約とか各種申請とか社内のあらゆる疑問はこの人に聞くと解決する。このために我々は仕事に集中できて、労働生産性が上がっていた。この人を補佐するアルバイトも2名雇っていた。こんな人が各部署(総勢40名くらい)に一人いた。部署数は全部で50あったから50名の事務処理専任社員がいたことになる。

ところが20年前に人件費削減のためにこの役職を廃止したのだ。全ての事務処理は我々社員一人一人がすることになった。平社員だろうが課長だろうが部長だろうが自ら行わなくてはならない。さすがに役員以上は秘書がつくので秘書に任せることができる。その結果どうなったか。全社的に労働生産性が落ちたのだ。

勤務表投入などの毎日する処理は惰性でできる。しかし海外出張とか他社との守秘契約とかたまにする処理で詰まる。過去にやったことはあっても、1年も間が開くとやり方を忘れてしまう。そこでマニュアルを読み直してやり方を学ぶ必要がある。マニュアルがどこにあるかも忘れてしまっているので、そこから調べなくてはならない。やり方さえわかれば事務処理の書類入力は30分程度で済むが、マニュアル探しとマニュアル読み込みは下手をすると半日つぶれる。この非効率を全社員に強制しているのだ。労働生産性が落ちるはずだ。

事務処理に必要な税制とか輸出規制とかの法律の原則をひとりひとりの社員が知ることは意味があると思う。しかし、書類の作成をひとりひとりの社員が行うのは意味がない。例えば確定申告のときに行う書類作成を思い出せば分かる。1年に1回しか処理をしない我々が書類の書き方を理解するのはとても時間がかかる。ところが税理士事務所の人は同じ作業を毎日繰り返しやっているので、書き方は頭の中に入っている。100通の書類を作成するとき、我々素人100人がそれぞれ作成するために必要な総時間と、税理士事務所の職員が一人で100通を作成するのに必要な時間は、前者の方がはるかに時間がかかる。これは非効率だ。

20年前に事務処理専任社員を廃止した会社の上層部は経営がわかっていなかったのだ。それが今でも改善しないということは、悲しいかな今の上層部もおつむが弱いのだ。人件費を節約しようとして却って無駄遣いになっているのがわからないらしい。

2025年6月28日土曜日

大原孫三郎氏の名言

大原孫三郎の名言と検索するだけで出てくるくらい有名な言葉だ。

「十人の人間の中、五人が賛成するようなことは、たいてい手おくれだ。七、八人がいいと言ったら、もうやめた方がいい。二、三人ぐらいがいいという間に、仕事はやるべきもの」 

この言葉は6/21号の週間東洋経済の地方創生がなぜ失敗するかの記事にあった。私はこの言葉を知らなかったが、読んだ時に思わず膝を叩いた。記事はさらに面白いことを分析している。成功地方自治体の3つの共通項を挙げている。
  1. 自前主義に徹する、外部のコンサルや官僚に答を求めない
  2. 補助金に頼らない、民間が喜んで投資する環境の形成こそ重要
  3. とがった人材に任せる、大切なのは百人の合意より一人の覚悟
これも納得だ。記事が指摘するように地方創生がうまくいかない自治体はこれの逆をやっていることが多い。

2025年6月27日金曜日

レンジローバーが高級車としての地位を確立した歴史

ランドローバー社のレンジローバーは高級車として知られている。同じ形式のアメリカのジープやトヨタのランドクルーザーやスズキのジムニーはそれほどの高級車感はない。これはなぜかと調べたら、エリザベス女王が理由だった。

ランドローバー社のランドローバー(写真)はアメリカのジープをまねてオフロードを走れる車として作られた。1948年に発売され、エリザベス王女の父親であるジョージ6世に寄贈された。ジョージ6世が崩御した1952年にエリザベス女王が即位した。このときランドローバーも彼女の所有になった。この車を女王が気に入って乗り回している写真がたびたび紹介されたので、ランドローバーは無骨なオフロード車ではあるもののセレブが乗ってよい車と認識されたのだった。

その後、ランドローバー社は本格的に高級車志向へ舵を切り、「レンジローバー」を1970年に発売した。その流れが今に至る。

トヨタがランドクルーザーを完成させたのは1951年で、アメリカのジープそっくりのデザインで名前もトヨタ・ジープBJ型だった。のちにアメリカのウイルス社から商標問題を言われて名前をランドクルーザーに変えた。ランドクルーザーも1970年頃にはずいぶん洗練されたデザインになったものの、オフロード車という立ち位置は変わってなかった。今もそれは変わらない。

スズキのジムニーは1970年に発売されて以来デザインはほぼ同じだ。乗用車として乗る人もいるが、純粋にオフロード車だ。

あの手のオフロード車がセレブに好まれる理由は、オフロードが走れるからではない。車体が高いので乗り込むときにひどくかがみこまなくて済む点と、車内が広い点が好まれている。その点は私もわからなくもない。

オフロードを走る性能はなくなっているが外見だけを似せたSUVという車種もある。これが好まれる理由も上記と同じく背が高く車内が広いからだ。これもわからなくもないのだが、SUVに乗るのは陸サーファーみたいでひどくカッコ悪い。レンジローバーもいくらセレブ向けにいろいろ装備したとしても、元はオフロード車なのだからオフロードで乗らないとカッコ悪い。そもそもエリザベス女王は田舎道を走るためにランドローバーを運転していたのだ。